【縣居通信5月】
『源氏物語』にも登場する伊勢神宮の斎王
「斎王(さいおう)」をご存じでしょうか。斎王とは、
天皇が即位すると、皇族の女性の中から選ばれて伊勢に派遣され、伊勢神宮に仕える皇女のことです。その斎王や斎王が住んでいた宮殿に関する資料を集めた斎宮歴史博物館(さいぐうれきしはくぶつかん)が、三重県多気郡(たきぐん)明和町(めいわちょう)にあります。
自家用車では、浜松から伊勢自動車道「松阪インターチェンジ」で下り、県道鳥羽松阪線経由で約40分ほどです。電車では、近鉄名古屋駅またはJR名古屋駅から松阪駅下車、近鉄山田線「斎宮駅」下車徒歩約15分です。
そこでは、斎王・斎宮とその居所を巡る歴史や文学、そして斎宮跡の発掘調査の成果を展示や映像を通して紹介しています。斎宮跡は国の史跡に指定され、現在も発掘調査が進められており、
博物館はその遺跡群の上に建てられています。
館内は、斎宮での生活や実物資料の紹介、発掘調査の様子や出土遺物の展示、特別展の展示に分かれています。それ以外に映像展示室があり、斎王の儀礼と都から伊勢への旅を再現した「斎王群行(さいおうぐんこう)」が1時間から1時間30分おきに上映されています。上映時間は20分弱ですが、非常に分かりやすくてお勧めです。2時間ほどあればゆっくり見ることができます。
賀茂真淵は「源氏物語」について講会を開くなど熱心に研究に取り組んでいて、「源氏物語新釈(げんじものがたりしんしゃく)」を著しています。
源氏物語の中で、斎宮・斎王の存在は、光源氏と六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)・秋好中宮(梅壺女御)の母娘と深く関わっています。六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)は娘が斎王に選ばれたのを機に、光源氏への思いを断ち切り、伊勢に下る決意をします。娘(梅壺女御(うめつぼのにょうご)・秋好中宮(あきこのむちゅうぐう))も、光源氏の思いを拒絶しつつも彼の栄華を支える一人となるなど、源氏物語の展開において重要な役割を担っています。
斎王の出立の日、宮中で「発遣の儀」が行われます。そこでは、天皇が斎王に櫛(くし)を授け(別れの御髪)、別れの言葉を述べますが、その様子が源氏物語にも描かれています。ちなみに、六条御息所・秋好中宮(梅壺女御)の母娘のモデルは、徽子(よしこ)女王と規子(のりこ)女王であるとされています。
伊勢神宮参りの途中に立ち寄られてみてはいかがでしょうか。
